「高校生活にバイクは不要」と主張した三ない運動
もしかしたら実際に経験したという方も多いかも知れませんが、1982年には「三ない運動」と呼ばれる社会運動が行われていました。高校生がバイクを利用することを禁止するための運動であり、全高P連によって特別決議されました。
三ない運動では「バイクの免許を取らない」「バイクに乗らない」「バイクを買わない」をスローガンに掲げており、この運動で原付一種を含むバイクの危険性が強調されていたのです。
しかし、交通事故を減らすために行われたはずの三ない運動が全国的に広まったにもかかわらず、1980年代後半から1990年代前半にかけて「第二次交通戦争」と呼ばれる状況に陥ってしまいました。交通戦争とは、交通事故死傷者数が増加する時期のこと。1980年から交通事故での死者数が増加し始め、1988年には1万人を超えたのです。
禁止は問題の先送りに過ぎない
つまるところ、三ない運動は問題の先送りにすぎませんでした。高校時代には無事に過ごせても、交通社会をどのように走行するか、安全運転に対するマインドを培う教育すら受けられないからです。つまり、禁止することで若年層の交通安全講習のチャンスを奪ってしまっていたという側面もありました。
1994年5月には、バイク運転中の高校生が生徒指導教員の取締りの車に追われ、逃走中に事故死した事件が問題となって、三ない運動への批判が一層高まることになりました。
そもそも、バイクで安全運転を心がけるよう指導することは学校のみならず親側の責任範囲でもあります。少なくとも、現在では学校でバイクを禁止するのではなく、安全運転指導をしたほうがいいのではないかとする機運が高まったのもこの時期です。
2012年の高P連大会では、自転車や歩行者での立場も含めたマナーアップ運動に変更することが発表され、三ない運動は事実上失われました。
禁止ではなく指導するのはバイクでなくても大切
ちなみに近年では、バイクよりもスマートフォンのほうがやり玉に上がりやすいようです。
「学校側でスマートフォンを禁止してほしい」という要望が届くようですが、学校側の方針としては「スマートフォンの使用ルールは家庭によって異なるので、学校ではトラブルに巻き込まれないよう指導するだけにとどまる」という方針を取る学校もあるようですね。
バイクの三ない運動を反面教師にしたかどうかは分かりませんが、禁止ではなく指導をするという方針は似ているなと思いました。